新しい筋力トレーニング方法

新しい筋力トレーニング方法:低負荷×高回数・BFR・呼吸筋&体幹トレーニングで変わるリハビリ

抜粋: 高齢者でも安全に行える「低負荷×高回数」トレーニングや、近年注目の「血流制限(BFR)トレーニング」、さらに呼吸筋や体幹へのアプローチが転倒予防にどう関係するのか――リハビリ現場の最新エビデンスを紹介します。


筋力トレーニングは「重い負荷をかける」だけではありません。リハビリや高齢者の運動指導では、安全性を確保しつつ効率よく筋力を高める方法が求められています。今回は、近年注目を集める新しい筋トレアプローチを3つの視点から紹介します。

目次

  1. 低負荷×高回数トレーニング ― 高齢者に優しい筋力アップ法
  2. 血流制限トレーニング(BFR)のリハビリ応用
  3. 呼吸筋&体幹トレーニングと転倒予防の関係
  4. まとめと臨床でのヒント

1. 低負荷×高回数トレーニング ― 高齢者に優しい筋力アップ法

従来の筋力トレーニングは「高負荷・低回数(80%1RM前後)」が基本とされてきました。しかし、近年の研究では、低負荷(30〜50%1RM)でも高回数反復すれば筋肥大・筋力向上が得られることが報告されています。

  • 主な特徴:軽い負荷で筋肉を疲労させるまで繰り返す(15〜30回×2〜3セット)
  • 効果:高齢者・心疾患・整形外科疾患のリハビリ患者にも安全に導入可能
  • 理論背景:低負荷でも「代謝ストレス」により成長ホルモン分泌・筋タンパク合成が促進される

特に、高齢者や慢性疾患の患者では関節や心肺への負担を最小限にしながら筋量維持ができる点が大きなメリットです。歩行訓練や日常生活動作と組み合わせることで、ADLの維持・改善に寄与します。


2. 血流制限トレーニング(BFR)のリハビリ応用

BFRトレーニング(Blood Flow Restriction Training)は、上肢または下肢の近位部に専用カフを巻き、軽い負荷(約20〜30%1RM)で筋肉に軽度の虚血状態を作る方法です。

この「軽い酸欠」状態により、筋肉は高負荷トレーニングと同様の刺激を受け、低負荷でも筋肥大効果が得られることが分かっています。

  • リハビリでの利点:術後・骨折後・筋力低下期でも早期に筋力回復を促せる。
  • 注意点:血圧、動脈硬化、糖尿病、末梢循環障害がある場合は慎重に適応を判断。
  • 実施例:20〜30%1RMのレッグエクステンション×15〜20回×2〜3セット。

BFRは日本発祥の技術(加圧トレーニング)から発展したもので、近年は医療用デバイスとしてFDA・CE認証機器も登場。リハビリ分野では「廃用性筋萎縮」「術後筋力回復」「高齢者筋トレ」の補助として導入が進んでいます。

最新トレンド:センサー付きカフを用いて血流量を自動制御する「スマートBFR」も登場し、リスク管理が容易になっています。


3. 呼吸筋&体幹トレーニングと転倒予防の関係

呼吸筋と体幹筋群は、姿勢制御とバランス維持の“隠れた主役”です。呼吸筋が弱ると、姿勢保持・歩行安定性が低下し、転倒リスクが上昇します。

  • 呼吸筋トレーニング(IMT):抵抗付き呼吸(吸気抵抗器など)により横隔膜・肋間筋を強化。心肺機能や歩行耐久力の改善が報告されています。
  • 体幹トレーニング:プランク・ブリッジ・ペルビックティルトなどで脊柱起立筋・腹横筋を鍛える。
  • 効果:体幹安定性の向上、転倒予防、呼吸効率改善、ADL維持。

また、呼吸筋と体幹は連動しており、呼吸×体幹トレーニングを組み合わせることで姿勢制御力を総合的に改善できることが分かっています。高齢者施設では、ストレッチポールやセラバンドを用いた呼吸運動が導入されるケースも増えています。


4. まとめと臨床でのヒント

  • 「重い負荷より、継続できる方法を」――リハビリでは低負荷でも継続性と安全性を重視する。
  • BFRは正しい手技とモニタリングが必須。必ず血流制限圧を個別設定。
  • 呼吸筋・体幹は、筋トレ以上に姿勢・転倒予防の基盤となる。
  • いずれの方法も、患者自身の「達成感」や「楽しさ」を引き出す工夫が継続の鍵。

これらの方法は、従来の筋トレの「限界」を補うアプローチとして注目されています。特に高齢者や慢性疾患患者では、安全性・継続性・機能改善をバランスよく実現できる点が魅力です。


参考文献(抜粋)

  • Mitchell CJ et al. *Low-load high volume resistance exercise stimulates muscle protein synthesis more than traditional high-load training in young men.* J Appl Physiol. 2012.
  • Patterson SD et al. *Blood flow restriction exercise: considerations of methodology, application, and safety.* Front Physiol. 2019.
  • McConnell AK. *Respiratory muscle training as an aid to rehabilitation.* Phys Ther Rev. 2017.
  • Granacher U et al. *Effects of core stability training on postural control and functional mobility in older adults.* Gerontology. 2013.

タグ:リハビリ, 筋トレ, BFRトレーニング, 呼吸筋, 体幹, 高齢者リハビリ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメント

お名前 *

ウェブサイトURL