アルツハイマー病という言葉を耳にすると、多くの人が「いつか自分や家族に関わるかもしれない」と不安を覚えるのではないでしょうか。

 

はじめに

アルツハイマー病という言葉を耳にすると、多くの人が「いつか自分や家族に関わるかもしれない」と不安を覚えるのではないでしょうか。

認知症の中でも最も多いこの病気は、長い年月をかけて脳に変化をもたらし、気づいたときには生活に大きな影響を及ぼします。そんなアルツハイマー病を、血液検査だけで予測できるかもしれないという研究成果が発表されました。これは、未来の医療に大きな希望をもたらすニュースです。

アルツハイマー病の仕組み

この病気は、脳の中に「アミロイドβ」というタンパク質が少しずつ蓄積し、やがて「リン酸化タウ217」と呼ばれる物質が加わることで進行していきます。神経細胞は壊れ、脳は萎縮し、記憶や思考が少しずつ失われていくのです。特にアミロイドβは、発症のずっと前から蓄積を始めることが知られており、早期にその兆候をつかむことができれば、病気の進行を食い止める可能性が広がります。

血液検査による新しい可能性

東京大学を中心とした研究グループは、日本人474人を対象に血液を採取し、アミロイドβやタウをバイオマーカーとして測定しました。その結果、PET検査という高度な画像診断に近い精度で、血液検査から病気の兆候を予測できることが分かったのです。アミロイドβでは「0.85」、タウでは「0.91」という高い一致率が示され、二つを組み合わせることでさらに精度が高まることが確認されました。これは、従来の負担の大きい検査に代わる、より簡便で優しい方法となる可能性を秘めています。

新薬とのつながり

昨年登場した新薬「レカネマブ」は、アミロイドβが固まる前に抗体を結合させ、神経細胞の破壊を防ぐ仕組みを持っています。しかし、この薬を使うためにはPET検査や脳脊髄液検査でアミロイドβの蓄積を確認しなければならず、検査を受けられる医療機関は限られています。血液検査で同じことが分かるようになれば、より多くの人が早期に治療へとつながる道を開けるでしょう。

社会的な背景

日本では認知症の人が急増しています。厚生労働省の推計によれば、2025年には471万人、2040年には584万人に達するとされています。さらに、発症の前段階であるMCI期の人も613万人に達すると予測されています。

こうした現実を前に、血液検査による早期診断は、社会全体にとっても大きな意味を持ちます。

未来への希望

研究者たちは「アミロイドβとタウのバイオマーカーを組み合わせることで、アルツハイマー病の超早期段階を予測できる」と語っています。

簡便な臨床診断と血液検査を組み合わせれば、発症前やMCI期の診断が可能となり、早期の予防や治療につながると期待されています。これは、家族や社会にとっても大きな安心をもたらす一歩です。

おわりに

アルツハイマー病は、誰にとっても遠い話ではありません。

血液検査という身近な方法で未来を予測できるようになれば、病気に対する恐れは少しずつ希望へと変わっていくでしょう。

医療の進歩は、私たちの生活を守るために着実に歩みを進めています。今回の研究成果は、その歩みの中で大きな光となるものです。

 

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