なぜ、片麻痺では“過緊張・拘縮”が起こるのか
――それは身体が選んだ「いちばん楽な道」だった――
◆ prologue|それは「怠け」でも「失敗」でもない
片麻痺の方を診ていると、
こんな疑問がふと浮かびます。
なぜ、身体はわざわざ
固くなり、動きにくい方向へ進んでしまうのだろう?
過緊張。
拘縮。
リハビリの現場では
「防がなければいけないもの」
「悪化させてはいけない状態」
として語られることが多い現象です。
けれど、もしそれが
身体にとって“自然な選択”だったとしたら?
今日は、その問いを
自然科学と神経科学の視点から、
ユニリハらしく紐解いていきます。
◆ 結論から言います
はい。
片麻痺で過緊張や拘縮が起こるのは、
かなりの部分で「そっちのほうが楽だから」です。
ただし、ここで言う「楽」とは、
✔ 回復にとって良い
✔ 機能的に正しい
という意味ではありません。
**脳と身体にとって
「省エネで」「安全で」「失敗しにくい」
という意味での“楽”**です。
◆ なぜ脳は「固める」選択をするのか

① 脳の最優先事項は「回復」ではなく「危険回避」
脳卒中などで片麻痺が起こると、
脳はまずこう判断します。
-
うまく動かせない
-
感覚のフィードバックが不安定
-
失敗すると転倒や痛みのリスクがある
この状態で脳が選ぶのは、
繊細な調整をやめることです。
「細かく動かすより、
固めてしまったほうが安全だ」
これは“異常”ではなく、
自然界に普遍的な生存戦略。
嵐の中で、
しなやかに揺れる余裕がない木が
太い幹だけで耐えようとするのと同じです。
② 過緊張は、実は「制御しやすい状態」
筋肉をゆるめて、
タイミングよく、
協調的に動かす。
これは脳にとって
非常に高度でエネルギーコストの高い作業です。
ところが片麻痺では、
-
抑制系が壊れている
-
感覚入力が不十分
-
運動の結果が予測しづらい
この状態で脳が選ぶのは、
👉 緊張を出しっぱなし
👉 指令を単純化
👉 失敗を減らす
つまり、
過緊張は、壊れた脳なりの“最適解”
なのです。
これは神経生理学的にも、
皮質脊髄路の抑制低下と
伸張反射の亢進として説明されています
(Lance, 1980)。
③ 拘縮は「時間をかけた省エネ固定」
過緊張の状態が続くと、
次に起こるのが拘縮です。
-
動かさない
-
同じ姿勢
-
同じ筋長
これが続くと、筋・腱・関節包は
こう学習します。
「この長さが、
この人にとっての“普通”なんだな」
筋線維の短縮、
結合組織の線維化、
関節包の硬化。
これは怠慢ではなく、組織の適応です
(Lieber, 2010)。
自然界で言えば、
-
使われない道が草に覆われ
-
流れない川が淀む
それと同じ現象です。
◆ ここで絶対に間違えてはいけないこと
過緊張や拘縮を、
❌ 悪い癖
❌ 意識の問題
❌ 本人の努力不足
と捉えるのは、
科学的にも倫理的にも誤りです。
それは、
✔ 脳と身体が
✔ 生き延びるために
✔ いちばん安全で楽な道を選んだ結果
にすぎません。
◆ ユニリハ的な視点|回復とは何か
ユニリハでは、こう捉えます。
身体は常に
「一番エネルギー効率の良い状態」へ向かう。
ただし、その基準は
「回復」ではなく「安全」である。
だからリハビリで必要なのは、
-
無理に伸ばすこと
-
正しさを押しつけること
ではありません。
必要なのは、
✔ 姿勢
✔ 支持面
✔ 重力との関係
✔ 呼吸
✔ 触覚・感覚入力
を整え、
「こっちのほうが、
固めるより楽だよ」
と身体に体験させること。
感覚入力が増え、
姿勢が安定し、
呼吸が深くなると、
脳は初めて判断を変えます。
「あ、
固めなくても大丈夫かもしれない」
◆ エビデンスはあるのか?
あります。
しかも一分野ではなく、
-
神経生理学
-
自律神経研究
-
筋骨格系研究
-
ニューロリハビリ
-
心理生理学
複数の学問領域が、同じ方向を指しています。
過緊張・拘縮は、
「壊れた結果」ではなく
適応の結果。
この理解は、
リハビリのアプローチを根底から変えます。
🌿 科学的に正しいのはこういう表現です
片麻痺で過緊張や拘縮が起こるのは、
神経・筋・自律神経など複数のシステムが
“省エネで安全な状態”を選択する傾向を反映したもので、
これは神経科学・リハビリテーション・心理生理学の文献に支持されている。
◆ epilogue|水は、抵抗の少ない道を流れる
水は、
「正しい道」を流れません。
一番抵抗の少ない道を、
静かに、確実に流れます。
人の身体も、まったく同じ。
過緊張も拘縮も、
身体が選んだ“自然な流れ”。
回復とは、
その流れを否定することではなく、
もっと楽で、安全で、柔らかい道を
そっと差し出すことなのです。
この視点を持つと、
リハビリの景色は、
驚くほど変わります。
そしてそれこそが、
ユニリハが大切にしている研究の核です 🌱
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