これまでの研究や教科書から学び まとめたノートより抜粋
■エピローグ
2002年 この 5年間で 自閉症児に関して大きな変化がありました 。
高機能自閉症
アスペルガー症候群 と
呼ばれる子供たちが激増しました 。
20年前 1万人に3人と言われていたのが今では100人に1人と言われて います。
■精神科の病気とは
精神科の病気は 脳の病気と仮定してください。 心の病気と考えるのは治療的ではありません。
性格が悪いとか
怠けているとか
こらえ症がないとか
わがままだとか
子供をマイナスに見る視点が膨らんできます。
悪者は脳のせいにしてください。
脳と心とは イコールです。
同じものを違う角度から見ているのです。
例えば
脳は視覚的に見えるもの
心は 聴覚的に聞こえるもの
心は脳の活動と単純に 仮定してみてください。
■症状とは
症状とは患者の対処行動(coping behaviour) です。
症状は確かになくし たいのですが 患者が 何 とか よりよく生きていこうとして意識的無意識的にとっている行動です 。
症状をプラス面で考える習慣をつけましょう。
例えば 暴力ですが 命 の 一生懸命さの表れと仮定するのが治療的です。
追い詰められた 現状を打開しようとする行動です。
私たちはその現状を変える工夫をしてみましょう
自傷も気持ちを安定させるようです 。
でしたら他に気持ちを安定できる行動を探してみましょう 。
■自閉症について
自閉症は正確な診断名ではありません 私は自開症と呼ぶべきだと考えています。
脳の中にあるフィルターのようなものが壊れていて あらゆる刺激 本人にとって有益なものも有害なものも全て入ってきてしまう。 病態です 。
脳が忙しすぎるのです 。
私は自閉症時に会うと
『可愛くて仕方がない 何とか助けてあげたい でも いくら 助けても満足感というものが得られない』
そんな気持ちになってしまいます 。
これを オーティスムス ゲフュールと呼んでいます。
ある保母さんは自閉症時に出会って この気持ちに捉えられ 小学校の先生になって自閉 症児について行ってしまいました。
■基本症状は4つあります
①まず2歳半までに発症すること
②2番目が自閉的傾向
③3番目が 言葉の遅れと歪み(オウム返し )
④4番目が同一性保持です
この4つが揃うと自閉症と判断することになっています。
症状名の後ろに能力という言葉をつけてみます 。
●自閉 能力
●オウム返し 能力
●同一性保持能力
症状 と思えたものがガラッと発想が変わるでしょう!
これらの能力を使って一生懸命生きようとしている自閉症児の姿が 浮かんできます。
私たちはこれらの能力を活かすように援助していくのです。
■基本障害
基本 障害は パターンの逆転です 。
●例えば パターン 全体/部分があります
私たちは物を見るときまず 全体を見ます それから 部分に向かっていきます 例えば車を見るとまず 全体を見てこれはエスティマ だな それから 部分に向かって女性が運転しているなとかライトが綺麗ながだな とか 細かく見ていきますところが 自閉症時の場合 パターンが逆転しています まず部分から見てしまいます 回っているタイヤにパッと目が行きます それで恍惚となってしまいます 車全体を見ることができません
● パターン因/果も逆転してしまいます。 彼らの世界では結果が先に出てきます
例えば ジグソーパズル ならもうすでに完成しているのですです。ですから その結果を 後追いすることしかできません 。
ピース 1枚ないだけでもパニックになってしまいます。
● パターン 質/量も逆転しています
私たちが 昔の友達に会います。 すると次から次へと彼との思い出が浮かんできて 話が弾みます。ところが 自閉症時では知り合いにあっても『あ! 人がいる』という 量的な認識しかできません 。ここにも あそこにも人がいるという世界です。
思い出に感傷的になるなんてことは 逆立ちしてもできません
■治療
資料 ページ 3 治療の基本構造の図 参照
まず 自然回復能力が根底にあります。
これを抱える形で意識的無意識的な 主体の病気を治そうとする働きがあります。
さらにそれを抱える形で、抱えの環境があります
☆主治医
☆受付
☆1枚の絵
全てが治療に参加して 患者を抱えています。
安心できる雰囲気を提供しているわけです 。
治療は 『パターン 』精神療法 / 薬物療法です 。
治療①
まず 精神療法が前提です
治療者と患者とが出会った瞬間から 精神療法 が始まります 。
精神療法では 抱えの環境 すなわち 安心できる雰囲気を提供し続けます 。
そして 患者が主体になって、ともにより良い未来に向かって 対処行動を工夫していきます。
治療②
そして必要が生ずれば 薬物療法を行います。 薬物は 生(なま)の精神障害を薬物性精神障害に変えます。
自己との折り合いが良くなります。
するとそれと並行して他者との折り合いが良くなります。
そして少量の抗精神薬は 自然回復能力を高めるようです。
私はフルメジンという神経遮断薬 をよく使います 体重10kg あたり 0.025mg の 少量で効果のある時があります。
■狭義の精神療法
私のクリニックでは 自閉症児の精神療法を行っています。
●週1回 1時間
40分は 本人との治療
残り20分は母親との話し合いです 。
自閉症児は1対1の関係しか結べません。
そして 成人の言語が通用しない世界に生きています。
治療者は黙ってそばにいます。
そして安心できる雰囲気を提供し続けます。
自閉症児の主体性 自発性を尊重します。
受け身で治療者が待っていると不思議なことに 子供の方から 働きかけてきます。
その時 子供の手足になって援助します。
黒子に徹しているわけです 。
子供と治療者との間に『魚と水の関係』が成立します 。
どこからが水でどこからが 魚かわからない一体感の成立です。
この精神療法が成立した時間を
『非日常的 時間』と呼びます 。
『非日常的 時間』が自閉症児にとってとても大事な時間です。
成長発達する余裕が生まれます 。
彼らは 残りの1週間 家庭や保育園で
『日常的時間』を過ごします そこでは
しつけがなされ
時には叱られ
泣いてしまうこともあるでしょう 。
でも いつも頭の片隅にクリニックでの
『非日常的 時間』が生きています。
(今度はこうしてみよう )
(先生に このミニカーを見せよう)
と 絶えず 非日常的 時間が流れています。
私たちはこの非日常性の時間の成立を目指します。
同行2人が理想です。
母親とも同行 2人の成立を目指します。
しかし 馴れ合いはいけません 。
しっかり治療の枠を守ること治療者は親切なおじさんではないので す 。
日々学びかつ考え
そして実践する その厳しさに耐えなければなりません。
私は1ヶ月に1万円 本を買いなさいと言っています 読むことも大事ですが本を買うという姿勢が何より大事なのです
■治療者の基本姿勢
1 出会いに待ったなし 出会いにフェイントなし 初回が大事です ジェントルマンあるいはレディーに対するように丁寧に出会うこと そしてより良い未来に向かっての出会いです。
2 黙ってそばにいる
まず黙ってそばにいます。
子供からの働きかけを気長に待ちます。
自閉症児は人が怖いのです
働きかけられるのが怖いのです。
『この人は安心だ』 とわかるとカタツムリがおずおずと角を出すように治療者に近づいてきます。
精神科 医師 斉藤聡明 氏
今回は以上です。
次回は治療者の姿勢や具体的な患者像、その際のかかわり方について語っていきます。
日本ユニバーサルリハビリテーション協会